エンレイソウの育成記録



 エンレイソウは日本各地の山地に自生し、谷筋などのやや湿った場所に生育しています。以前はユリ科のグループに入っていましたが、今はシュロソウ科とされています。野山に花の少ない早春に開花し、夏に種子を落とします。花の色に派手さはありませんが、渋い濃紫褐色の花と、幅の広い3枚の葉には優雅さを感じます。山地の植物なので夏の暑さや乾燥にはやや弱い部分がありますが、育成難度はそれほど高くありません。しっかり水と置き場所の管理ができれば、少しずつ生長しながら毎年花をつけてくれます。

 ここでは、植栽しているエンレイソウのライフ・サイクルを紹介しています。 
エンレイソウ  2月下旬  越冬芽の薄皮を破って新芽が顔を出しました

 越冬芽は秋(10月頃)には地表に出ています。冬期も屋外に置いていますが、霜が当たらないように軒下に置いています。

 また冬期であっても休眠していないので、用土は乾かないように管理しています。
エンレイソウ  3月上旬  葉とツボミ

 芽が出てからは比較的はやくツボミが現れます。この時点での植物体は小さく感じますが、ここから茎は伸び、葉は大きく展開していきます。そしてその過程で開花も始まります。
エンレイソウ   3月中旬  開花しました

 外花被片3個だけの花です。花の色は濃紫褐色ですが、濃淡には個体差があるようです。また園芸店などでは違った色のものも販売されているようですが、私は詳細を知りません。
エンレイソウ  3月中旬  花の中央に雌しべの3岐した柱頭が出ています

 雌しべの柱頭は見られますが、雄しべはまだ開いていません。自家受粉を避けるための順序だと思いますが、結局は自家受粉して結実しているような気もします。
エンレイソウ   5月中旬  果実です

 未熟な果実ですが、大きく膨らんできました。この時点でも、色褪せた花被片が残っています。
エンレイソウ  6月下旬  果実を落としたエンレイソウ

 果実は落ち、この頃からゆっくりと葉や茎が枯れ始めます。
 エンレイソウは多年草ですが、冬季には冬芽以外の地上部は枯れる植物です。



エンレイソウの植栽例(動画) 春の芽出しから開花までの記録  2021年撮影
 
 口丹波地域では比較的身近な谷から、低山の中腹の湿った斜面などに生育し、主に日陰地で見かけます。葉が展開する早春には直射日光を当てて管理しても、陽射しが強くなる4月中旬頃からは半日陰で育てます。湿った場所に生える植物なので水切れが起きないように注意しなければなりませんが、反面蒸れにも注意が必要です。蒸れると根腐れを起こし枯れてしまうことがあります。そのため用土は保水力があり、水はけの良いものを選びます。赤玉土と硬質鹿沼土の混合土などが適しているようですが、私は赤玉土と桐生砂の混合(5:5)で育てています。肥料は置き肥です。移植は秋が適しているように思います。やや深めの植木鉢に植栽します。増殖は実生では開花までに5年ほど要します。株分けもできるようですが、根茎が腐らないよう注意が必要です。

 自生地のエンレイソウ

(最終更新日 2021年12月3日)


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