センブリの育成記録



 センブリはやや湿った山野の草地や斜面に生える、背の低い2年草です。センブリを育成するには、この2年草という生態が重要なキーワードになるので、先に説明をします。センブリの増やし方は種の採り播きになりますが、秋~晩秋にかけて開花するセンブリの種子が熟すのは、もう冬近くになっています。晩秋~冬に落ちた種は翌春に発芽しますが、その年は小さなロゼット状の葉のままで1年を過ごし、茎をのばしたり、花をつけたりはしません。ロゼット葉はいったん冬に枯れ、次の年の春に再び姿を現します。この時には、葉は小さいものの根は太く頑丈になっていて、初夏頃から細い茎をのばします。茎は直立して枝を出し、茎頂や枝先に花序を形成して秋に開花します。開花が終わると果実が膨らんできて、中の種子が成熟すると果実の先端が開裂して種子を落とし、親株は2年の短い生涯を終えます。
 上記のことから言えることは、花の咲いているセンブリを購入した場合、その株は花後種子を落とすと枯れてしまい、種子が落ちても翌年に花を見ることはできず、花は2年後に咲くということです。ですから1年目の小さな苗を雑草と勘違いして、「センブリは枯れてしまった!」と早合点で育成を放棄しないようにして下さい。1年目もしっかりと水の管理などを行わないと、それこそセンブリは絶えてしまいます。センブリは2年草と書きましたが、発芽したものの中には、発育が遅れ、3年目まで花をつけないものがでてきます。そうすると播種から2年以降は毎年花を楽しむことができます。生涯で1度しか開花しないセンブリです。大切に育ててやりたいものです。

 ここでは、植栽しているセンブリのライフ・サイクルを紹介しています。 
センブリ  3月中旬  開花する年の新芽です。

 前年のロゼット葉は冬に枯れ、新しい葉が出てきました。この小さな画像の中には10株以上ありますが、お分かりになるでしょうか?
センブリ  7月下旬  茎がのびてきました。

 茎は直立します。午前中は陽に当てても、午後は日陰の風通しが良く、涼しい場所に置くように注意します。夏の強い直射日光を長く当てることは避けます。土の表面が乾いているようなら、たっぷりと水を与えます。
センブリ  10月中旬  センブリの花です。

 ツボミは淡く紅紫色を帯びることがありますが、花は白色でシャープな印象があります。花は次々と開花します。花の中心にペットボトルのような形をした黄緑色のものがありますが、これが子房で、中に種子ができて果実となります。花後は果実が少し膨らんで、種子が熟せば先端が開裂します。種子を採り播きする場合は、その時期に行います。
センブリ  10月中~下旬  数株を寄せ植えするとこんな感じです。

 小さな植物なので、数本を寄せ植えすると見栄えがします。
センブリ  8月上旬  ロゼット葉

 開花する株の根元に、開花を諦めた2年目の株があります。種が落ちた翌年の株(1年目の株)も、その年の秋にはこのような感じになりますが、1年目の春の芽出しの頃のロゼットはもっと小さいので、見落とさないように観察して下さい。左の画像のロゼットは、この翌年(3年目)に花をつけます。
 
 2年草ということで、同じ株を何度も植え替えることはないと思います。移植は播いた種子が発芽する1年目は避けて、2年目の発芽以降、茎があまりのびていない時期が良いと考えています。播いた種子の多くが発芽すると植木鉢の中で混み合うので、どうしても間引きか移植をすることになると思います。使用する用土は市販の山野草の土や赤玉土(小)に川砂や桐生砂など水はけの良いものを混ぜ、保水と水はけが両立した土壌環境にして下さい。野生のセンブリは常に湿気た土に生えています。土には適量の腐葉土を混ぜ、肥料は極力少なめに抑えます。ちなみに私はまったく肥料を使用していません。見た目はひ弱そうなセンブリですが、比較的育成の容易な山野草だと思います。

  (サイト内リンク)自生地のセンブリ(動画有り)

 
  
(最終更新日 2016年2月24日)


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